「武器としての「資本論」」を読んだ

はじめに

週刊東洋経済 コロナの時代の新教養」で紹介されていた本の一冊
普段は東洋経済は全く読まないが,なりゆきで読むことに
真っ赤な表紙と漠然と資本主義社会に生きる人間として見逃せない「資本論」という言葉に惹かれて購入

武器としての「資本論」

武器としての「資本論」

資本論に関する本を全く読んだことはないが,著者いわく

資本論」が現代資本主義の有様をいかに鮮やかに照らし出すかを強調するために,非常に体系的に書かれている「資本論」の記述順序を無視していくつかの概念に絞った説明を提示しました

とあり,著者が「資本論」を通じて訴えたいメッセージが書かれている本だとらしい.

個人的に気になった箇所の感想を書こうと思います.

生殖までもが「商品化」される

商品でなかったものがどんどん商品化されるようになってきて,その勢いはとどまるところを知らない

ここから資本主義を理解していきました.
昔の人が自らの手で賄っていたようなもの,例えばペットボトルのお茶なんかが商品になる例から始まり,ゆくゆくは生殖までもが商品化されると.

「それをお金で買いますか」

日本の歴史になぞって,いかにして資本主義社会になったのかを説明しています.
明治時代の身分制の廃止と土地の売買の自由化により,土地と人間の商品化への道が開かれ,現代の資本主義へとつながります.ここで,人間は商品を生産する商品となるわけです…

包摂

包摂とは,定の範囲の中に包み込むこと.

労働過程をまるごと資本が形づくってしまった状態を,マルクスは「実質的包摂」という概念で捉えた

生産工程が細分化され,労働者一人ひとりは決まりきった作業をやらされるようになります.これは肉体の動きが完全に包摂されるということだと解説しています.

いつから歯車となって戦う男になってしまったのでしょう…

肉体を資本によって包摂されるうちに,やがて資本主義の価値観を内面化したような人間が出てくる.すなわち感性が資本によって包摂されてしまうのだ

魂の包摂.「個」を喪失した傀儡へ

人間の感性が資本に包摂されてしまうことについては,「新自由主義」(ネオリベラリズム)視点から解説があります.
「小さな政府」「民営化」「規制緩和」「競争原理」などのキーワードだけ置いておきます.

新自由主義が変えた人間の魂・感性・センス

資本の側は新自由主義の価値観に立って,「何もスキルがなくて,他の人と違いがないんじゃ,賃金を引き下げられて当たり前でしょ.もっと頑張らなきゃ」と言ってきます.それを聞いて「そうか,そうだよな」と納得してしまう人は,ネオリベラリズムの価値観に支配されています

これに衝撃を受ける労働者は多いのではないでしょうか?
自身も評価面談で似たようなことを言われました.納得はしませんでしたが,どう言って良いかもわかりませんでした.心の中では,ここに長くいることはないという漠然とした気持ちだけがはっきりした瞬間になりましたが

労働者階級

賃金労働者として生計を立てている限り、私たちは労働者なのですから。その私たちが、労働者のアイデンティティに誇りを持たなくなってしまった。学歴がある、スキルがあるからたくさん稼げる。稼ぎが低いのはスキルがないからで、それは人として価値がない証拠である。そんな低レベルの連中とはさっさとオサラバして階級上昇を目指すのが当たり前だ.

男はつらいよ」を例に,資本による「包摂」の深化を説明していたところです.
階級毎の感性…全く考えたことがなく面くらった箇所で,理解が追いつかず

「有用性」と「価値」,この両者の二重性あるいは対立は「資本論」の重要なテーマ 生産手段を持っていない存在,端的に言えば「仕事がなくて無一文」ということ

受動的な消費者

消費者然としている学生は,決まってつまらなさそうな顔をしています.おそらく人生がつまらないのでしょう. 彼らには「自分で面白いことを見つけて,それを学ぼう」という考えはなくて,「どこかから面白いこと,楽しませてくれる何かが自分を目がけて振ってきて,それを自分を楽しませてくれるのがあるべき姿だ」と思っています

この後に,

「先生の話がつまらない」「何を言っているのかわからない」という時に,「それはひょっとすると自分の知力が足りないためではないか」とは絶対に思わない.

と続いて,大学生の頃を思い出し納得しました.とても耳が痛い.
逆に今は,何故か勉強(出来ないこと)に励んでいるので我ながら良い方向に進んでいるのではないかと思っています.

学生諸君は先生に向かって「こいつは何をわけのわからないことを言っているんだ.」なんて言わないように(戒め)

資本の本質

増えることそのものが資本の本質

「増えることによって,人々が豊かに成る」ことは資本の目的ではない

しらなかった.人々が豊かになることがどうでもいいことだったなんて

労働の価値

労働によって形成される価値 > 労働力の価値
労働力の費用以上の価値を労働者が生成することを,剰余価値の搾取といって資本主義では当たり前

労働者の賃金水準は,労働者自身が生きて,労働者階級が再生産されるのに必要な費用に落ち着く(リカードによる賃金の生存費説)
搾取によって死んでしまう < 賃金 < 金持ちになって働かなくて済む

少ない収入でなんとかしてやりくりして生きていかなくてはいけないという状況の下でそうしたマインドが生じるわけですが,「必要」の水準が自己評価に結びついているため,デフレマインドに陥ることで,自己評価もどんどん低くなってしまう

だめじゃん

資本制と奴隷制

近代社会は「自由・平等・人権」を掲げ、かつてのような人による人の支配を根本的に否定し、人格の尊厳を確立した──と言われています。ただしそれは建前上の話であって、「資本による労働者の支配」という現実があるかぎり、私たちの社会は奴隷制の痕跡を残していると言えます。

さらに封建制を加えて,労働者自身ためのの労働と資本家のための労働について説明しています.
資本制は,資本のために生産性を上げているのに,自分のために生産性を上げていると錯覚してしまう特徴があるので気を付けましょう.(無理)

搾取の限界

19世紀のイングランドで制定された工場法と働き方改革は同じ?
先に述べた労働者の賃金水準が,搾取によって死んでしまうラインを超えてしまったために作られたのだとしたら…資本主義恐ろしい

フォーディズム

高い賃金で労働者を消費者に! 裏には,生産ラインに労働者張り付かせても剰余価値生まないから知力や感性といった能力で剰余価値を生もうという転換
認知資本主義というらしい

普通に働いていればいい時代の終焉

知力の時代到来(イノベーション!)

中流階級没落

ト○ンプ政権爆誕???

でも本書では,イノベーションはその場しのぎだよね…と説明していて,今度はグローバル化により労働力の価値引き下げに活路を見出していきます

おわりに

自分の付けたハイライトを元に感想を書いてみました.
結構,これってどういうことだっけ?と思うところがあり,読み返したりして全然進まなかったので,9章ぐらいまでで諦めました笑
TODO:その時々で感想をメモる

あと労働者の身なので内容がとてもつらかった!
現代のプロレタリアート代表たるエンジニアなんて全く報われないじゃないかとさえ思うほどに.

キャッシュレス化においても,お金のやり取りを全て電子データに置き換えることで,お金のやり取りの記録が残ることなるから,そんなものは調べられるに決まっている!
とか言われて,VISAタッチ便利!とか言って喜んでいる俺って…

最後に一言
俺達は贅沢をして良いんだ!(財布の中身を確認する)